内部のヴィジョンの登場。
突然、だが、先駆者としての一つのことば、伝令としての一つのことば、
人間に先んじて地震を感じる猿のように、
行為に先んじて警報を受けとる私の言語中枢から、発せられた一つのことば、
《眩しく目をくらませる》ということばにすぐ続いて、
弾道のような何本もの長いナイフ
眩しく輝く何本ものナイフが、空虚の中を、すばやく耕す。
突然、一本のナイフが、突然千のナイフが、稲妻を嵌(は)めこみ光線を閃かせた千の大鎌、
いくつかの森を一気に全部刈り取れるほどに巨大な大鎌が、
恐ろしい勢いで、驚くべきスピードで、空間を上から下まで切断しに飛び込んでくる。
激しく引き裂かれる殉教者。
わたしは内心ひそかに苦悩しながら、
滅茶苦茶に引き裂かれる苦悩。それはあたかも、自分の中で、いくつもの細胞が、その弾性の限界に達するまで、その恐ろしい加速度に自分を合わせてついていくことを、強いられているような苦しみだ。(細胞自身の痙攣そのものが加速度の原因でないとしたら)
それらのナイフや大鎌と同じ速度の耐え難いスピードに自分を合わせ、
ますます激しくバラバラに裂け、解体し、狂気へと陥ってゆきながら、
ある時はそれらのナイフや大鎌と同じく途方もない高さにまで、
それから忽ち、すぐ次の瞬間には、
それらと同じく深海の深さまで、ついてゆくことを強いられる・・・・・・それにしても、一体これはいつ終わりになるのだろうか・・・・・・それがいつかは終わりになるとして?
終わった。遂に終わった。
(アンリ・ミショー全集Ⅳ みじめな奇蹟Ⅱメスカリンとともに /小海永二訳より)